生成AIプロジェクト―キーマンに聞く①―

2025年5月からスタートした生成AIプロジェクト

歩み始めたばかりですが、会社や働く人の未来に大きな可能性を秘めたプロジェクトです。今回から3回に渡り、プロジェクトを推進するキーマンのインタビューを掲載します。第1弾は、リーダーを務める宮地宏明常務。その原点には、「働き方改革」につながる一手はAIが鍵になるという思いがありました。今回はプロジェクトにかける思いや展望について語っていただきました。


———生成AIの可能性を知るきっかけは?

宮地 本格的に業務で生成AIを活用してみようと思ったのは、小林さん(※)との出会いが大きいです。2024年12月、地域雇用活性化促進事業で「生成AIを活用したデジタル活用生産性向上セミナー」に参加したのですが、その時の講師が小林さんでした。(※AIの専門家。後のインタビューにも登場する予定です。)

生成AIはプライベートで使ったことはありましたが、業務で具体的にどう使うかという視点では、このセミナーが初めてで、参加者とのグループワークの際、他社での実際の活用事例を聞くことができ、とても刺激になりました。
中でも、小林さんの説明が、とても分かりやすかった。パワーポイントも、いわゆる理系っぽいものではなくて、すっと入ってくる内容でした。

電設資材の卸販売がメインである当社にとって、営業の場面では生成AIをどのように活用できるのだろうか?社内だけで活用を進めようとすると、スピードも上がらないし抵抗も出るだろうな、というのは想像していました。
だから、セミナーの休み時間に小林さんをつかまえて、当社の業務をできる限り具体的に説明しながら、生成AIでどんな活用方法が考えられそうかという話を結構しました。

———プロジェクトの初期段階の構想と変遷は?

宮地 最初は、生成AIを使って営業担当の時間外勤務をどう減らすか、というド真ん中でやろうとして取締役会にも起案しました。
「営業担当の電話応対時間をどうにか削減する」という話を出したら、「それはちょっと難しいんじゃないか」という反応が出ました。そこで、営業担当の業務に直接ではなくて、営業担当が社内に頼んでいる業務にAIを活用するという方向に転換しました。

つまり、営業担当の時間外勤務を減らす、という目的は変えずに、そこを間接的に効かせるやり方にした、ということです。 もう一つの壁は基幹システムの存在です。社内業務にAIを活用しようとすると、必ず基幹システムにぶつかる。改修が必須になって、どうしても話が重たくなる。そこで、「基幹システムを触らずに、どこでできるか」という発想に切り替えました。

100%を求めると進まない

宮地 最初はどうしても「100%の答え」を求めてしまうんですよね。「AIを入れたら全部自動でできるんじゃない?」みたいな過度な期待をしてしまう。でも、それだと全然進まない。
部分的にでも短縮するほうが、結局は一番の近道だということに辿り着きました。

経営管理室の安東主任が、フードプロセッサーの例えを出してくれたことがあって、「材料を入れたらカレーができあがると思っている人がいるけど、切る工程を機械に任せるだけでも十分時短になり、価値がある」という話でした。AIも同じで、100%じゃなくても途中を任せるだけで、全体はすごく楽になる。

———初期にAI利用に関する社内アンケートを実施されましたが、どんな結果でした?

2026年1月実施のアンケートで、「AIの利用が進まない」「頻度が低い理由は何ですか」という質問をしました。一番多かったのが「どんな業務で使えるかがわからない」というものでした。全体の25%程度です。次が、「回答の整理や信頼性に不安がある」という回答で20%。そして「操作方法や具体的な使い方がわからない(14%)」「業務が忙しく、新しいツールを覚える時間がない」「セキュリティや情報漏洩の不安がある」という順番でした。

「使いどころがわからない」という壁


宮地 「業務でどう使ったらいいかわからない」という部分が肝だと思っています。プライベートでは使うけど、仕事でどう使えばよいかわからない、という人が多い。また「新しいことをやるのが大変」「忙しい」という現状もあると思います。

———今年度は新たなメンバーも加えて進めるとのことですが、チームでやる意味と狙いは?

個人だと、どうしても途中で止まってしまうと思います。「これで合っているのか」「分からないのでもういいや」と諦めてしまう。
だから、1チームあたり2~3人ぐらい×5チームで、各チームの事業所内の効率化したい業務を拾い出してもらうようにしています。加えてプロンプト作成補助や困りごとの打開策を相談できる、サポートチーム、推進チームを構えており、つまずいた時でも他の人が手を差し伸べる、そんな形です。

習慣として使えるかどうか

宮地 社内で「それ、AIに聞いたらわかるんじゃない?」みたいな会話が、自然に出てくる状態にしたいです。AIを使うことを、特別なことにしない。調べる、確認する、下書きを作る、それらの延長線上に常にAIがある。こういう習慣・感覚になってくると、皆の感じ方や使われ方は変わってくると思います。
「これAIでできたよ」「それどうやった?」という会話が増えれば、自然と活用は広がってゆく。今はその状態を作るのが大事だと思っています。

———AI活用を進める上で皆に意識してほしいことは何ですか?

繰り返しになりますが、「まずやってみること」だと思います。最初から完璧にできなくていいし、失敗してもいい。「これはできるかな」「AIでいけそう」と思ったら、まずやってみる。その姿勢が一番大事と思います。

周りの声がけが文化をつくる

宮地 プロジェクトの中でも、最初は「自分の業務では使えません」と言っていた方が、最後には「やってみます」と変わってきたケースがありました。これは本人だけの変化じゃなくて、「それ、AIでできるよ」と周りから声をかけてもらったことが大きいと思います。

一人で黙々とやるよりも、「これAIでできたよ」というのを、周りの皆さんと共有してほしい。大きい成功じゃなくていい。「10分時短になった」「ちょっと楽になった」。そういう小さな成功が広がると、全体として大きな変化になると思います。

AIを導入すること自体が目的とは思っていないです。時間外勤務を減らしたい、働き方を変えたい、判断の質を上げたい。そのための手段としてAIがあると思います。 完璧を目指さず、まずやってみる。できたことを共有する。周りが声をかける。その積み重ねが、結果につながると思います。これからも、試行錯誤しながら進めてゆきます。

編集後記

今回の情報交換会では、生成AIの活用が単なるツール導入ではなく、業務のあり方そのものを見直す可能性を持つ取り組みであることが共有されました。
業務効率化、働き方改革、採用広報など、多方面での効果が期待される生成AI。宮地電機では、こうした取り組みを通じて、より効率的で働きやすい環境づくりと、企業としての新しい価値創出を目指してゆきます。