生成AIプロジェクト―キーマンに聞く②―

宮地電機で業務改革推進のリーダー役を務める石川担当室長。数年前から本格的にAIに触れ、その可能性を一番感じている一人と言えます。その石川担当室長にAI推進の意味・ビジョンについて語ってもらいました。


———業務改革推進立場から、AI導入はどんな意味を持っていると感じていますか?

石川 生成AIの導入効果って、もちろん「仕事が早く終わる」という部分もあると思います。ただ、本質はそこだけじゃなくて、「人の時間の使い方を変えること」だと考えます。

これまでは、単純作業や文書作成、データ検索みたいな“作業”の部分に、かなり時間を使ってきたと思うんです。そこをAIに任せることで、人は本来やるべき「判断」や「調整」といった、付加価値の高い仕事に時間を使えるようになる。
そうやって、時間の使い方そのものを変えてゆくことが、AI導入の一番大きな効果だと思っています。  

———時間外勤務についてはどう考えていますか?

石川 「頑張って早く終わらせましょう」とか、「気合いで早く帰りましょう」という話ではなくて、そもそも時間がかからないやり方に変えることが大事だと思っています。
やり方を変えないまま時間外だけ減らそうとしても、やっぱり無理が出てきます。だからこそ、仕組みを変える。その手段の一つがAIなんだと捉えています。  

ただ、仕事のやり方を変えることに抵抗を感じる人がいるのも自然なことです。「変えましょう」と言われるだけで、構えてしまうこともありますから。 
なので、まずは日常業務の中で「面倒だな」とか、「時間かかるな」と感じるところにAIを使ってみる。そこで「便利だな」と実感できれば、自然と時間の使い方も変わってゆくんじゃないでしょうか。

あと大事なのは、AIで生まれた時間をどう使うかですね。付加価値の高い仕事に使う人もいれば、そうじゃない人もいると思います。でも、最初から全員が理想通りに使えるとは思っていないので、ある程度のばらつきは仕方ないかなとも感じています。 

———実際にAIを使ってみて、「これは便利だった」と感じたものは?

石川 特に効果を感じたのは、Excelでのデータ突合ですね。自分自身、現場を長くやってきたので、「これはかなり使えるな」と感じました。 
それ以外だと、会議のメモ作成やメールの下書きです。全部をゼロから作るんじゃなくて、まず“たたき台”を作ってもらう、という使い方ですね。 

———Excelデータの突合とは、どんな作業ですか?

石川 複数のデータを突き合わせて、差異や漏れがないかを確認する作業です。 
例えば、当社の仕入データと、メーカーからの請求データを照合するといった業務があります。AI導入前は、この作業に通常でも2時間、多いときは4〜5時間かかることもありました。
しかも、それを各事業所でそれぞれやっているので、全体で見るとかなり大きな業務負担だったんです。 
AIを導入したことで、この作業時間をかなり削減できるようになりましたし、全社的な業務効率化にもつながっていると思います。 

———正確性は?

石川 最初は簡単なミスもありました。ただ、小林さんにチューニングしてもらいながら、トライアンドエラーを重ねて、今ではほぼ間違わないレベルまで精度が上がっています。
プロンプトの中で、「ここはこう判断する」「ここはこう処理する」という指示を細かく積み上げてきた結果ですね。
このような取り組みって、単に「便利になった」というだけじゃなくて、ノウハウとして蓄積されるのが大きいと思っています。
一度作ったものをベースに、さらに改善できますし、「特定の人しか使えない」ではなくて、誰でも使える形に標準化できる。そこは大きなメリットだと思います。    

———どんな業務にAI活用の効果が出やすいと感じていますか。

石川 やっぱり定型業務ですね。特に流通品質の業務は、かなり効果が出ると確信しています。
当社の基幹システムって、基本的にExcelへ出力して使うことが多いんですが、画面上だけでは完結しない処理も多いです。Excelに出力して、印刷して、チェックする。そういう流れですね。
前にお話ししたデータ突合のような作業をAIでさらに自動化できれば、いろんな場面で時間短縮につながると思っています。

あと、Excelって便利なんですが、結局は人が入力して、人が加工して、人が確認しているんですよね。並び替えや集計をすれば便利に使えるんですが、その前段階の作業負担がかなり大きい。
そういう部分にも、AIが入る余地はまだまだあると考えます。  

———営業現場でのAI活用の可能性は?

石川 営業では、特に見積業務への効果はかなり期待しています。 図面をベースにした見積作成や、品番選定、後継品の検索など、AIを活用できそうな場面は多いですね。
ただ、メーカー側のデータ公開の問題もあって、現時点ではまだ完全ではありません。後継品の検索も、正解が出るときもあれば、間違うときもあります。 
なので、全部をAIに任せるというよりは、AIが候補を出して、人が最終確認する。その形が現実的だと思っています。
営業でも、「作業時間を短縮して、考える時間を増やす」という目的でAIを使う。その考え方自体は、他の業務と同じですね。

———管理職での活用はいかがですか?

石川 課長職以上になると、数値管理や週次管理、会議資料、戦略資料など、本当にExcelを使う場面が多いです。正直なところ、当社の基幹システムって、営業や管理側が“使いたい形”でデータを取り出しにくい部分があるんですよね。
受注データ自体は入っているんですが、そのままでは活用しづらいので、結局、別でExcelを作って管理している。営業担当者も管理職も、それぞれでExcel管理をしているのが実情です。
これはかなり重複作業が多いですし、無駄も大きいと思っています。
本来なら、基幹システムのデータをそのまま加工・活用できるのが理想ですし、そういう部分でもAIの活用には期待しています。 

定型業務にこそAIを

石川 繰り返しになりますが、やっぱり定型業務が多いところほど、AIの効果は出やすいと感じています。
ただ、一気に全部を変える必要はないと思うんです。まずは「これ、楽になったよね」という成功体験を、一つずつ積み上げていく。それが現実的な進め方だと思っています。
日頃の業務の中でも、「もっと簡単にできないか」「もっと楽にできないか」「もっと正確にできないか」という視点を持ってもらいたいですね。
その中で、「AIでやったらどうなるんだろう?」と考える人が増えてゆけば、その積み重ねが、大きな業務の効率化につながると思います。

———AI活用が広がると、会社はどう変わると思いますか。

石川 AI活用が広がることで、「業務をこなす会社」から、「考える会社」に変わってゆくのではないでしょうか。
これまでは、どうしても作業に多くの時間を使ってきました。でもAIを使えば、その“作業”の部分を少しずつ減らせられる。その分、「考える」「判断する」という時間に使えるようになります。 

ただ、AIはあくまで優秀な「アシスタント」です。最後に判断するのは人間。この部分は今後も変わらないと思っています。
AIに任せられるところは任せて、その分の時間は、判断の質を高めるために使う。そうすることで、結果的にはお客様への提案力や対応力の向上にもつながると確信しています。

番外編 -展示会における発注業務のAI導入


石川 AIの活用事例として展示会での発注業務があります。ある支店から「展示会の発注の仕組みをどうにかしたい」という相談を受けたのがきっかけでした。展示会が外部会場の場合、社内ネットワークにつないでも通信速度が遅く、各PCでデータを集約し、持ち帰って後日処理している状況でした。
実際には、展示会場で各担当者がEXCELに入力した注文情報を、ひとつに集約して、仕入先毎に発注番号を採番し、かつ仕入先毎に分けて発注するという流れとなります。しかしこれらの作業はすべて手作業で行っていたため、発注までたどり着くのにも多大な手間がかかっていました。また、当日中に受注金額を算出することは困難な状況でした。

そこで「AIで何とかしよう」と、注文情報の集約、注文番号の自動採番、仕入先・事業所ごとの自動振り分けをCopilotに任せました。さらに、出展企業様からの要望が多かった「展示会当日の会場内での受注情報共有や発注」が可能になりました。もちろんそのデータを基幹システムに入れれば、当社の売上情報となります。大幅なスピードアップが期待でき、皆さんに喜んでもらえる仕組みだと思います。

こうした仕組みは、作るだけだったら簡単ですが、現場で本当に使えるかが重要と思います。展示会って一発勝負なので、「あとで直します」じゃ済まない。その場で動くかどうか、使えるものになっているかがポイントです。
展示会は各事業所で開催されるので、流用できるようにします。例え会場が外部でも流れは同じであり、だから数ヵ所の同時開催でも対応できます。
実際に使った人、発注を回した人からすると、当日の負担がまったく違うはずです。集計に追われて、発注が遅れる、金額が分からない、という状況がなくなります。
この「助かった」という感覚が、一番大事だと思っています。

展示会の発注業務って、一見地味ですが誰かが必ず苦労している業務です。そうした業務を一つずつ楽にしていくことに意味があると思っています。AIというと、派手なことができるイメージがありますが、実際には、こうした地道な業務でしっかり役立つかどうかが、一番の価値ではないでしょうか。
今回の展示会の仕組みは、「これは使えるな」とはっきり言える事例だと思っています。これを一回で終わらせるのではなくて、次にどうつなげてゆくか。 現場で使えた、負担が減った、という実感があれば、次のアイデアは自然と出てくる。その流れを作りたいと思っています。

利用者の声

展示会での販売情報のデータ化および仕入先様への共有には、従来多くの時間と手間がかかっており、課題となっていました。
今回新たに導入したAIの仕組みにより、展示会でお客様にご購入いただいた情報を所定のフォーマットへ入力し、そのデータをAIエージェントで処理することで、仕入先様向けの発注データを自動作成し、メールやFAXで迅速に送信できるようになりました。その結果、従来と比べて約2日早く送付することが可能となりました。
さらに、その後の当社における受注データ作成についても、AIを活用し仕入先別にシートを自動生成するなど、これまで手作業で行っていた工程を自動化することができ、ストレスの軽減とデータ精度の向上を実現しました。

今後は、入力後の型番や金額などの修正箇所についても、仕入先様のデータと当社データをAIで比較・照合する仕組み(検証済)を活用することで、さらなる時間削減が期待されます。

———時間外勤務のことはどう考えていますか?

石川 実務で一番わかりやすい事例として展示会での発注業務があります。ある支店から相談があって、「展示会の発注の仕組みをどうにかしたい」という話でした。展示会の会場は、外部で社内ネットワークにはつなげず、これまでは各PCでデータを集約して、持ち帰って後日処理するという流れでした。
実際には、現場で注文情報をEXCELに入力して、その後に集約して、仕入先ごとに分けて発注するという工程ですが、誰かがずっと張り付いてやらないといけない。当日中に受注金額を出すことも難しいですし、発注まで持ってゆくのも大変でした。

AIを使った新しい仕組み

石川 今回、その仕組みをAIで作りました。集約したデータをもとに、当日中に仕入先別の金額を出して、出展メーカーに公開し、かつ発注もできる。もちろんそのデータを基幹システムに入れれば、売上情報となります。
実際に活用するのが4月の展示会で、皆に喜んでもらえるシステムと思っています。
こういう仕組みって、作るだけだったら簡単ですが、現場で本当に使えるかが重要なんですよね。展示会って一発勝負なので、「あとで直します」じゃ済まない。その場で動くかどうか。そこで使えるものになっている、というのが今回のポイントです。

———今後の展開は?

展示会は各事業所で開催されるので、この仕組みを流用できるようにします。 会場が外部でも、集計して、仕入先別に振り分ける。このフォーマットは共通です。だから、数ヵ所の同時開催でも対応できます。

———今後の展開は?

石川 展示会は各事業所で開催されるので、この仕組みを流用できるようにします。 会場が外部でも、集計して、仕入先別に振り分ける。このフォーマットは共通です。だから、数ヵ所の同時開催でも対応できます。

「助かった」という感覚が、一番大事

実際に使った人、発注を回した人からすると、当日の負担がまったく違うはずです。集計に追われて、発注が遅れる、金額が分からない、という状況がなくなります。
この「助かった」という感覚が、一番大事だと思っています。
展示会の発注業務って、地味ですが誰かが必ず苦労している業務です。こういうところを一つずつ楽にしていく。AIって、派手なことができるイメージですけど、こういう地味なところで使えるかどうかが、結局は一番の価値だと思っています。

今回の展示会の仕組みは、「これは使えるな」とはっきり言える事例だと思っています。これを一回で終わらせるのではなくて、次にどうつなげてゆくか。
現場で使えた、負担が減った、という実感があれば、次のアイデアは自然と出てくる。その流れを作りたいと思っています。

編集後記

今回の情報交換会では、生成AIの活用が単なるツール導入ではなく、業務のあり方そのものを見直す可能性を持つ取り組みであることが共有されました。
業務効率化、働き方改革、採用広報など、多方面での効果が期待される生成AI。宮地電機では、こうした取り組みを通じて、より効率的で働きやすい環境づくりと、企業としての新しい価値創出を目指してゆきます。