トップメッセージ
マネジメントの会社へ」
挑戦し続ける宮地電機
私の祖父であり、宮地電機の創業者である宮地恒治は、もともと農業を営んでいました。しかし、終戦を迎えた際に「これからは電気の時代だ」と考え、電気の仕事を始める決意をしました。この選択こそが、現在の宮地電機の原点です。もし当時、電気ではなく別の事業を選んでいたら、会社が今まで続いていたかどうかは分かりません。電気の重要性をいち早く見抜いた創業者の先見の明は、本当に素晴らしいものだったと思います。
また、創業者は高知から事業をスタートし、四国四県へと積極的に拡大・発展させました。その強い意志と行動力が、今の宮地電機の基盤を築いたのです。現在、四国四県でトップシェアを誇るのも、創業当時の決断が大きかったと言えるでしょう。
次に、宮地電機を支えてきたのは、皆さんの存在です。80年にわたり、多くの方々が入社し、会社の発展に貢献してくれました。戦後間もない創業当時、電気業界の将来性は不透明でしたが、時代とともに電気が広く普及し、魅力的な業界へと成長したことで、優秀な人財が集まるようになりました。宮地電機で働く皆さんは、素直で真摯、そして前向きに仕事に取り組む人々の集まりです。そうした人財が揃っていたことが、会社の成長を支える大きな要因となりました。
さらに、宮地電機は単なる電気材料の販売にとどまらず、照明を中心としたインテリアの提案販売にも力を入れています。日本全国の同業他社には、電気材料の販売のみを行う会社も多いですが、私たちは照明分野に重きを置き、業界トップを目指してきました。全国的に「照明のことなら宮地電機」と認知されるほどの評価をいただいているのは、先輩方や皆さんの努力の賜物です。特に最近ではLEDの普及により、照明デザインはますます高度化されていますが、私たちは常に研究を重ね独自の付加価値を提供し続けています。
そして、宮地彌典前会長は「宮地電機をいい会社にしよう」と、様々な制度の整備と改革に取り組みました。例えば、文書の作り方やホッチキスの使い方などの細かなルール整備に始まり、女性が働きやすい環境づくりにも力を注ぎました。育児休職、産前産後休職、マタニティ制度などを整え、結婚・出産・育児を経ても継続して勤務できる環境を整えました。こうした制度の導入により、実際に優秀な女性が長く働き続けられるようになり、会社の力となっています。
この10年間は、予測不可能な変化に満ちた年月だったと感じています。例えば、70年社史や当時の社内誌「COMMON」にも記載されている水銀に関する水俣条約、脱炭素の動き、そして太陽光発電の普及などは、ある程度予測できた変化でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大はまったく予測できませんでしたし、「働き方改革」という概念も当時は浸透していませんでした。このように、社会や企業を取り巻く環境は、この10年で大きく変化したと感じています。
また、2015年に宮地彌典前会長が他界されたことも、会社にとって大きな転機となりました。ご存命であれば、様々な助言や意見をいただけたと思いますが、社長としては強い後ろ盾がない中で、その時々の判断を下さねばならず、自信を持てないことも多かった10年だったと振り返ります。
さらに、人口減少に伴う人手不足や働き方改革は、当社だけの課題ではなく、社会全体が直面している問題です。そのため、今後の舵取りは非常に難しいものになると考えています。
東日本大震災以降、太陽光発電や省エネ、カーボンニュートラルの取り組みが進んできました。世界的にも脱炭素は喫緊の課題とされ、日本は国際的な約束として《2050年カーボンニュートラルの達成》や
《2030年までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減する目標》を掲げています。これらを実現してゆかなければならないことは確かですが、とても難しい挑戦でもあります。
私は蓄電池の普及が進むと考えていますが、技術的・価格的な課題により、広く普及するのは簡単ではありません。では、蓄電池以外のエネルギー源があるのかというと、水素やアンモニア、風力などさまざまな選択肢はあるものの、それらが安定したエネルギー源になり得るかどうかは、現時点ではまだ確信を持てません。そのため、これからの時代はより複雑で難しいものになると感じています。
私たちはこれまで、電気や照明を中心に事業を展開してきましたが、その供給源をどのように確保するかというエネルギーマネジメントも大きな柱の一つとして取り組んできました。以前から、「エネルギーマネジメントについて相談できる相手がわからない」というお客様の声を多くいただいていました。そこで、「宮地電機に相談すれば解決できる」と思っていただけるよう、省エネルギー担当室を設置し、専門的な研究を進めてきました。
さらに、省エネルギー担当室を拡充し、この春からは各県に専門メンバーを配置しました。その結果、各地域のニーズに迅速に対応できる体制が整い、今後さらに社内でエネルギーマネジメントの取組みが活発化すると期待しています。

働き方改革について考えると、納得できる部分もあれば、そうではないと感じる部分もあります。休日の増加や時間外勤務の削減は必要だと思います。しかし、一方で「人の価値とは何か?」という問いが、私の中で常にジレンマとしてあります。
私は、「その人にしかできない仕事をすること」が働く価値だと考えています。ロボットでもできる仕事や、Aさんの代わりにBさんが問題なくこなせる仕事は、果たしてプロフェッショナルといえるでしょうか。属人化の解消がよく議論されますが、本来の「プロ」とは代替不可能な存在であるべきだと思います。例えば、もし大谷翔平さんが育児休職を半年間取ったとしても、彼の代わりは誰にも務まりませんよね。
宮地電機というステージを最大限に活かしながら、一人ひとりがプロとして輝くことこそが、本当の幸せではないでしょうか。そのためには、誰にも負けない独自の能力を磨き、人脈を築き、誰かの役に立つことが重要です。しかし、一般的に言われる「属人化の解消」を伴う働き方改革は、こうしたプロフェッショナルな成長と相容れない部分もあるのではないかと感じています。
働き方改革は重要な取り組みですが、個々の専門性や強みを活かすことなく、画一的な仕組みに組み込んでしまうのは、本来の「プロ」としての働き方を損なう恐れがあります。そのため、すべての改革を無条件に受け入れるのではなく、宮地電機にとって適切な働き方改革を慎重に選択し、導入してゆこうと考えています。
他社には真似できない新しい知恵やノウハウを持つことで、お客様にもっと感動してもらう。先進的なテクノロジーやサービスを社内で実験的に導入することで、より正確にお客様へ訴求できる。この考え方は、当社が常に研究開発を行っているからこそ可能なものです。しかしながら、例えば徳島支店にも導入したHCL(ヒューマンセントリックライティング)や、明るさセンサー、人感センサー、タイマーを駆使した「全自動照明」は期待したほど社会に普及していません。
また、蓄電池も期待されたほどの市場成長は見られませんでした。有機ELについても同様です。情報を収集し、様々な検査・研究を重ねたにもかかわらず、思惑どおりに進まないこともあります。しかし、会社としてそれを「失敗」と捉える必要はありません。「失敗を恐れずに」という言葉の通り、積極的に挑戦し続けることが重要です。チャレンジした結果、思うような成果が得られなかったとしても、それはただ「そうならなかった」というだけのことです。
だからこそ、皆さんにはこれからも果敢に新しいことに挑戦してほしいと願っています。まだまだ挑戦が足りていないと感じるほどです。新しいことに取り組み、可能性を広げてゆきましょう。
—BCPの重要性
近年、熊本地震や能登半島地震が発生し、四国に暮らす私たちにとって南海トラフ地震への備えはより切実なものとなっています。こうした状況を踏まえ、改めてBCP(事業継続計画)、つまり事業をいかに短時間で復興させるかという計画を作り直すべきだと考えています。以前に策定した計画は、時間の経過とともに記憶の中で薄れてしまい、十分に活用されていないのではないかと感じています。
地震が発生し、津波が襲来した際に、私たちはどのように行動すべきか。これを再検討し、社内で共有することが重要です。また、宮地電機として地域の復興のための電気材料を迅速に供給することも、私たちの使命であると考えています。
さらに、当社が瀬戸内配送センターを観音寺に設置した理由も、この事業復興の観点と深く関わっています。こうした点を改めて確認し、万が一の事態に備えてゆく必要があると強く感じています。
経営課題として、最も重要なのは人手不足への対策です。今後、定年退職により会社を卒業される方が増える中、経営開発室の努力により新卒や中途入社の採用を進めています。しかし十分な人財を確保できているか、あるいは今後も確保し続けられるかについては、不安が残ります。さらに、今後の状況は現在よりも厳しくなると予想されるため、この課題は会社の存続に関わる重要な問題だと認識しています。
宮地電機は「入りたい」「長く勤めたい」と思われる会社にならなければ、生き残ることはできません。そのためには定着率向上に向けた取り組みが不可欠です。特に研修には力を入れており、四国の同業他社よりも充実した研修を提供できていると自負しています。当社で働く人が、身に付けたい知識を身に付け、学びたいことを学ぶことができる、成長の場を継続的に提供してゆきます。
また、最近気になるのは、社内コミュニケーションが以前に比べて減少しているのではないか、という点です。例えば、入社歴が浅い方が何かを質問したいと思っても、「先輩が忙しそうだから」と遠慮してしまう場面があるかもしれません。しかし、そうした状況が生まれないように、「遠慮せずに聞いてほしい」と伝えたいと思います。
Microsoft Teamsの導入により、業務のストレスが軽減されたことはとても良いことですが、やはり直接的なコミュニケーションの重要性は変わりません。個々の交流を活発にし、相談しやすい環境を作ることで、より良い職場を創ってゆきます。
事業を長期的に存続させるために、目の前の一瞬を大切にすることが重要だと考えています。もちろん、遠い未来を見据えることも欠かせませんが、予想通りに進まないことがあるのは当然です。だからこそ、「今後の展開が不透明で見通しが立たない」という前提で考え、柔軟に対応できるよう準備しておく必要があります。
例えば、私は現在、水素エネルギーについて熱心に学んでいます。もし今後、水素が広く活用されるようになった場合、何がどう変わるのかを想定し、適切な手を打っておくことが重要だと思っています。
改めて考えると、私たちのビジネスはニッチな領域に属しているかもしれません。しかし、世間で大きな話題となるような分野ではなくとも、異なるニーズを模索し、それに応えてゆくことが必要です。電材業界自体がニッチな分野ともいえるため、「ニッチ」という言葉の使い方が適切かどうかはわかりませんが、決して目立つわけではないものの社会にとって欠かせない重要な事業であることは間違いありません。
また、私は「100年企業」という明確なゴールを持つ必要はないと考えています。気付いたら100年経っていた—それでいいのではないでしょうか。70年から80年があっという間に過ぎ、気付けば10年が積み重なっていました。企業の歴史は、「色々あった」日々をひとつずつ積み重ねた結果です。だからこそ、毎日を誠実に過ごし、お客様を含めた周りの方々に貢献することに全力を尽くしてゆけば、それが企業の継続につながるのではないかと思っています。これこそが「年輪経営」の考え方です。
